2020年以降、合格率と人気が高くなっている資格が国家資格の宅地建物取引士(宅建士)。
不動産業界では、宅地建物取引士にしかできな独占業務が3つあるためこの資格は必須の資格です。宅建士は事務所に5人に1人の設置義務があるため宅建士がいないと開業もできません。

宅建士の取得者の半分は、不動産業と関係ない人というデータもみたことがあるので「将来なにかの役に立ちそうだし取得しておこう」という人も多いと思います。国家資格の中では勉強時間が短いわりに役立つコスパの良い資格なので、とりあえず取得しておいて損はない資格ですね。
宅建士取得の最年少は13歳~16歳(中学生・高校生)もいますし、高齢になると77歳~89歳で合格しています。宅建士を77歳で取得して80歳で不動産屋になった和田京子さんもいるぐらいです。

最近では、IT重説も可能になりZOOM等で重要事項説明書のやり取りをする不動産屋も増えています。この場合、記名押印された重要事項説明書をお客さんに送付しておく必要があります。
2023年 宅地建物取引士試験の基本情報
出題分野は大きく分けて4つあります。
- 権利関係(民法、借地借家法、区分所有法、不動産登記法)
- 宅建業法(宅建業法、住宅瑕疵担保履行法)
- 法令上の制限(都市計画法、建築基準法、国土利用計画法、農地法、宅地造成等規制法、土地区画整理法)
- 税その他(税法、地価公示法、不動産鑑定評価基準、住宅金融支援機構、景品表示法、統計、土地、建物)
電卓の持ち込みは「NG」になっているため計算問題は手計算で解かないといけません。
消費税計算など算数程度の計算問題がでてくるため、電卓OKと勘違いする人もいるので注意しましょう。
(5) 法令集・電卓等の計算機類について、試験時間中は机上に置くこと及びその使用を禁止します。
引用:一般財団法人 不動産適正取引推進機構 | 宅建試験 | 宅建試験のFAQ
宅地建物取引士試験の合格率
宅建士試験の合格率は15%から17%前後。
絶対評価ではなく相対評価なので、年によって合格基準点も上下します。


2020年と2021年は試験会場不足から10月と12月に分かれて試験が行われました。
ここ数年の宅建は、受験者のレベルが高くなっているため合格ラインもかなり高くなっています。
令和2年は38点が合格ラインになっていましたし、その後の試験ではかなり嫌らしい引っ掛け問題も出てきているので1点足りないで不合格になってしまったという人が続出しています。
昔のように3ヶ月で合格というのは厳しい試験になりました。
年度 | 申込者 | 受験者 | 合格者 | 合格率 | 合格点 |
---|---|---|---|---|---|
令和3年度[12月] | 39,814 | 24,965 | 3,892 | 15.60% | 34点 |
令和3年度[10月] | 256,704 | 209,749 | 37,579 | 17.90% | 34点 |
令和2年度[12月] | 55,121 | 35,261 | 4,610 | 13.10% | 36点 |
令和2年度[10月] | 204,163 | 168,989 | 29,728 | 17.60% | 38点 |
令和元年度 | 276,019 | 220,797 | 37,481 | 17.00% | 35点 |
全てマークシート方式なので運が良ければ合格できると思いがちですが、合格率からもわかるように8割以上は不合格になっているので、しっかり勉強しないと合格は不可能です。
2023年 宅地建物取引士試験合格に必要な勉強時間
宅建士に合格する時間は、合計で300~400時間前後です。毎日2時間勉強して、月60時間✕6ヶ月=360時間といった感じですね。


宅建試験は範囲が広いため、試験が近づいたときに前半に勉強したことを忘れてしまいがちなので、反復学習して記憶を定着させましょう。
宅地建物取引士試験の分野別目標点数
初学者は「宅建業法→法令上の制限→税・その他→民法」と進めるのがおすすめです。
ただ、宅建業法や法令上の制限は、1週したぐらいだと忘れてしまうので、問題集を3週ぐらい回す必要があります。
民法1周目と宅建業法2周目を同時に進めるなどしたほうが安心です。詳しく宅建の分野別目標点数にまとめました。
2023年 宅地建物取引士試験は独学でも合格できる?
宅建士は、勉強に必要が300時間と少ないため独学で合格する事も可能です。例えば、40歳を過ぎて副業のために独学で宅建士を取得したり、60歳になり退職後の仕事のため独学で宅建士をとる人もいます。
ただ、8割は落ちる試験ですし、仕事をしながら勉強をする人がほとんどなので効率のよい勉強法とスケジュール管理は必須です。そこが出来ない人は、宅建に独学で合格するのは厳しいです。
また、参考書や問題集も沢山でていますので、その中から自分にあったものを探す必要もあります。



令和元年以降、民法は難問が増えた印象です。独学では厳しいですし、基礎を固めただけだと太刀打ちできない問題も多く出題されているので宅建業法と法令上の制限を完璧にしたほうが合格しやすいです。
宅建初学者におすすめの教科書と問題集
初学者が独学で宅建の勉強をするなら、TAC出版のカラーイラストが豊富な下記2冊がおすすめです。
特におすすめは、黄色の問題集で「分野別」の過去問になっているのが特徴です。
例えば、13年分の過去問をやると1度しか出題されなかった問題も多数含まれています。
勉強にはなりますが、初学者で出題頻度の低い問題を多くやると「10年に1度しかでないような覚えなくて良い問題を沢山こなしてしまう」ので試験勉強としては非効率です。
そういった意味で、黄色の分野別の過去問をやるのは、ピンポイントで重要なところを覚えられるメリットがありますよ。




他に、宅建系のyoutuberもいるので合わせて参考にすると良いですね。
宅建吉野塾のテキスト「宅建士出るトコ集中プログラム」も完結にまとまってて参考書にちょうどよいです。とくに民法は簡潔でわかりやすいです。ドリルのほうは、穴埋めなど初学者には難易度が高いので買わなくてもよいと思います。
その他、宅建のひっかけ問題対策も合格にはかかせません。
2023年 宅地建物取引士試験の通信講座
独学では挫折してしまいそうという人は、合格率の高い通信講座と通学講座を受講するとモチベーションが保ちやすいです。
下記に、合格者が使ってる宅建士講座をまとめたので良かったら参考にしてくださいね。
スタディングの宅地建物取引講座


累計1,942名(合格者の声に掲載数)
最新令和3年度682名(合格者の声に掲載数)
スタディングの宅建士講座は、値段が安くて洗練されています。初学者の人が最初に手にする教材におすすめです。
ユーキャンやフォーサイトよりも後発組の通信講座ですが、スマホ学習機能やオンライン講座が充実していますね。
内容を深堀りするために、市販のTACのテキスト問題集は買っておいたほうが良いと思います。
教育訓練給付制度は対象外です。
スタディングの評判はこちら>>
スタディング宅建士講座の口コミ



宅建士試験の勉強、スタディングの法令上の制限の後半取り組み中。
ペーパーレス目指していたけどテキストに書き込みしないと頭に入らない
Webテキスト印刷する時間が勿体無いからテキスト追加購入することに。やはり、自分に合ったやり方が一番だと思う
引用:https://twitter.com/



自分はテキストだけでは理解が全くできない人間なので宅建取得した際も利用した「スタディング」というオンライン講座で勉強しています。
分野ごとに講義動画があり、動画視聴後は簡単問題を解き、その後過去問を解くことで知識の定着がめちゃくちゃできるからオヌヌメ。
引用:https://twitter.com/



スタディングの宅建士講座だいぶ進んだー!この講座、内容がカリキュラムがよく出来ていて過去問にスッと入っていけます。宅建士、民法の基礎も学べてめっちゃタメになるんですよねぇ。10月受験なので総合資格の1級建築士講座本格スタートまでの繋ぎにちょうど良いしw
引用:https://twitter.com/
スタディングの講座内容
アガルートの宅地建物取引講座


通信講座の値段や教材など、全体的にバランスの取れた通信講座です。
こちらも後発組の通信講座ですが、授業はスマホ特化していてポイントを絞った講義を細切れに視聴することができます。
「講義→問題→講義→問題」といった繰り返し学習をしやすい環境になっています。
アガルートの講座内容
フォーサイトの宅地建物取引講座


フォーサイトは、老舗の通信講座です。テキストはフルカラーで完成度が高いと評判で、講義は丁寧です。
口コミにもあるように、動画はテキストを読み上げていくだけの部分もありますが、スマホで通勤時に勉強する分には問題ありません。
他に良い点としてeラーニングアプリの「ManaBun」で1問1答えができるのですが、リニューアルされてかなり使いやすくなっています。分野別に弱いところがわかりますし、最適な学習スケジュールを自動作成してくるので参考になります。
フォーサイトの講座内容
ユーキャンの宅地建物取引講座


フォーサイトと同じく30年以上前からある通信講座です。こちらのテキストもフォーサイトと似た感じですね。
リニューアル前は使い勝手があまりよくなかったですが、スマホで動画講義視聴やスケジュール管理などができるようになり、リニューアルしてやっと普通のレベルになった感じですね。
ユーキャンの講座内容
2023年 宅地建物取引士試験の通学講座
TACの宅地建物取引講座


宅地建物取引士試験 TAC本科生
累計合格者数 10,972名
通学して頑張りたい人におすすめです。スマホ環境などデジタル部分はまだ環境整備が遅れているので、通信講座は上記の通信講座より劣る印象です。
教材は、宅建の試験範囲を全て網羅しているので、量は多いですが全分野を平均的に勉強したい人におすすめです。
TACの講座内容
LEC東京リーガルマインドの宅地建物取引講座


対象受講生338名中、219名が合格
TAC同様に通学して合格したい人におすすめです。通学予備校の中では、比較的料金が安いのでコスパがいいと思います。
割引キャンペーンもやっているので、安く受講したい人は早割キャンペーンを狙って入学すると受講費用を節約できます。
LECの講座内容
この他にも、宅建ユーチューバの解説がかなりわかりやすいです。
ユーチューバーの講義は基本無料なので一度は見てみると勉強になります。
宅建士3つの独占業務
重要事項の説明
不動産屋で宅地や建物の購入、賃貸などの契約前に契約の重要な内容を説明する業務です。宅建士は、事務所毎に勤務する宅建業従事者の5人のうち1人以上を設置しなければいけません。
重要事項説明書への記名と押印
宅建士は、口頭説明をしたあとに重要事項説明書(重説)に記名と押印をして、お客さんにしっかりと説明したことを証明します。
契約後交付する書面の記名と押印
宅地建物取引業法の37条書面への記名と押印を行い、契約者当事者が納得して契約たことを証明します。この3つが宅建士にしかできない独占業務です。この独占業務があるので宅建士は人気の国家資格の一つになっています。
宅地建物取引士(宅建)は、不動産の売買や賃貸の仲介などに不可欠な資格。不動産が資産として重要視される日本において、常にニーズが高く、数ある国家資格の中でも抜群の知名度と活用度を誇ります。 その理由は、宅建の資格取得者なしには、不動産業者が宅建業を営むことができないから。仕事で大いに活かすことができ、就・転職の武器にもなる、人気の高い資格です。
引用:ユーキャンの宅地建物取引士(宅建士)資格取得講座|宅地建物取引士とは
宅地建物取引士試験に合格した後
宅建士になるためには、宅地建物取引士試験に合格後、2年以上の実務経験(申請時から過去10年以内に2年以上あること)が必要になります。たまに従業者名簿に氏名が載ってない人もいるので確認しておきましょう。また、賃貸管理業務のみしかやっていない不動産屋の場合、実務経験に該当しないこともあるので注意です。


人によっては、管理業務主任者の資格やマンション管理士の資格を同時に受験する人もいます。
不動産業ではないけど、宅建士の資格登録をしたほうがいい?
もし他業種からの転職で実務経験が行えない場合は、登録実務講習(2日間拘束される講習で重説と契約書の作成をします)を終了すれば宅建士になれます。


大手予備校のLECなどでもやっていて、受講料は2万円前後で、修了試験終了後1時間ぐらいで修了証をもらえるところもあります。試験自体は、まるばつの問題と記述式で99%合格します。修了証は、都道府県知事への登録申請に使用するので無くさないようにしましょう。
講習終了証明書を発行してもらったら県民局で登録をします。有料なので37,000円かかり、その後登録まで2ヶ月程度かかるので気長に待ちましょう。登録完了通知がきたらやっと取引士証の交付となります。交付も手数料4500円がかかります。
宅建業を開業するための費用
個人で宅建業を開業する場合には、費用がかかります。
都道府県知事免許申請の手数料が3万7千円、免許取得後に営業保証金を供託(1000万)するか、弁済業務保証金分担金を宅地建物取引業保証協会に納付(60万)する必要があります。
また、宅建士の更新は5年ごとで更新費用がかかります。東京都であれば、合計で16,500円(講習受講料 12,000円、取引士証交付申請手数料 4,500円)です。
相性の良い資格
宅建士の資格は、行政書士の資格や不動産賃貸経営管理士とも相性が良いです。両方とも国家資格の役立つ資格のなかでは勉強時間が少なく小回りが効く資格なのでコスパが良いです。行政書士は不動産の知識がない人が多いため不動産の知識があると仕事の幅を広げるという意味でも便利です。